『母なる海へ還りたい…』
人生を終えた後にあなた自身が還る場所はどこなのでしょうか。
遺骨はお墓へ入るものという従来の考え方がある一方で、最近は海洋散骨をはじめとする自然葬を希望する人も増えてきているようですね。
この記事では海洋散骨の流れなどについて解説してまいりましょう。
海洋散骨に興味があるけれど、どういうことをするのかわからないという人へ向けた記事となりますので、どうぞお付き合いください。
○ 家族に海洋散骨を希望されたけれど、何をどうすればいいかわからない
○ 海洋散骨は誰に依頼すればやってもらえるのか?
散骨という葬送
散骨と聞くと、最近になって始められた葬送のように思われがちですが、実は日本でも海外でもはるか昔より行なわれていた儀式だったんです。
日本においては国家の方針や法律の整備などによって、お墓に納骨をすることが当然の決まりであるとされていた時代が最近まで続いていました。
ですが、1990年代になり自然葬(散骨)について『マナーを守れば法律には触れない』という見解が示され、再び散骨が葬送のひとつとして認知されていきます。
現在では有名人が散骨をしたり、マスメディアなどが散骨の紹介をしていったりしたことで広く一般にも知られるようになりましたよね。
海洋散骨のメリット
海洋散骨を選択するメリットとはどういったことが考えられるのかをみていきましょう。
お墓承継の心配がない
先祖の遺骨が眠るお墓は、代々承継(相続)をしていかなければならないものなんです。
しかし現代社会は少子高齢化&核家族化に晩婚&未婚率の上昇と、ひと昔前とは状況が大きく変わっていますよね。
『遠方に暮らす子供や孫に負担をかけたくない』
『子供がいないからお墓を承継できない』
『独り身なんだけどご先祖のお墓をどうしていけばよいやら』
…といった悩みを持つ人も多くなってきているようです。
そういった悩みを解決するために、墓じまいをして海洋散骨を行なえば、お墓の承継については心配がなくなりますね。
自分の希望をかなえられる
『釣りが好きだから死んだら海へ遺骨を撒いてほしい』
『人生の最期は自然の中で眠りたい』
というポジティブな希望や、
『家族と縁を切っているから最期の事は自分で決断をしていきたい』
『親族と揉めているから同じ墓に入りたくない』
というネガティブな希望など、海洋散骨を選択することであなたの思うような葬送を実現できます。
経済的負担を軽減できる
お墓を新しく準備する場合、墓石代金や土地使用料、維持管理費、魂入れの開眼法要にかかるお布施なども含めると、平均で200万円ほどの費用が必要になります。
お墓がすでにあったとしても、年間の管理費用が永年必要となってきますね。
海洋散骨だったら、お墓の準備費用の10分の1ほどの金額で葬送をすることが可能ですし、散骨以降の管理維持費などもありません。
お墓の場合は、管理費の未払いが続いたりすると使用権を失ってしまいますが、海洋散骨ではそのようなこともありませんので、子孫に対する負担を軽くすることができるのです。
海洋散骨のデメリット
なんとなく自由で解放的なイメージのある海洋散骨ですが、デメリットもあります。
散骨したら遺骨が残らない
至極当然のことなのですが、海洋散骨をすると手元に遺骨が残らなくなります。
どうしても遺骨を残しておきたいのであれば、一部を分骨して手元供養をするなどの手段を考えておく必要があります。
家族間で意見の不一致が起こる
海洋散骨をすることを知らない親族から、遺骨の取り扱いについて文句を言われたりなどのトラブルが起こったりします。
特に、昔からの習俗を重んじる親族の場合は、大きな揉め事になりかねません。
そういうトラブルを未然に防ぐために、家族・親族間で情報を共有しておくことが大切です。
相応の節度を守ることを求められる
海ならどこでも散骨できる…なんてことは社会通念上ありえないことですよね。
遺骨という存在は、遺族にとっては大事なものであっても、他人からすると『なんだか怖いな…』『ちょっと嫌だな…』という感情を抱かせてしまいます。
そういう他者の気持ちや周辺の生活環境、生産活動に影響を与えないように注意を払って海洋散骨を行なうことが、最低限のマナーとして遺族に要求されるのです。
海洋散骨の流れ
海洋散骨を考えているけど、どういう手順で葬送が行なわれていくのかわからないと思いますので、解説してまいります。
事前の流れ
- 専門の業者に相談する
まず海洋散骨を希望するならば、プロに相談をしてみましょう。
『個人でも散骨できるんでしょ?』と思われるかもしれませんが、個人での散骨はかなりハードルが高いです。
そもそも散骨をするためには遺骨をパウダー状に加工しなければいけないため、いずれにしても業者さんの力を借りないといけませんね。
- 生前契約と家族への相談をする
海洋散骨をする気持ちが決まったら、家族や知人などに相談をしたうえで生前の契約をしておくことをオススメします。
散骨プランによって内容や金額が異なりますので、業者さんとやり取りをしながら進めていきます。
散骨プランの違い
- 代理散骨
業者さんに海洋散骨を代行してもらいます。
遠方で参加できない、身寄りがないので代わりに散骨してほしいなどの場合に選択されます。
- 合同散骨
複数の家族で船をシェアして、各々散骨の葬送を行ないます。
一隻の船をシェアするので、散骨に参加したいけど費用を抑えたいという時に選ばれます。
- チャーター船散骨
一家族のみで船を貸し切り、海洋散骨を行ないます。
船を貸し切るので、日程などを自由に決めて散骨をすることができます。
代理⇒合同⇒チャーターの順で費用が上がっていきます。
火葬後~散骨当日の流れ
- 散骨のための準備をする
遺骨となった後は、業者さんに預けて粉骨に加工してもらいます。
業者さんへ預けに行く、引き取りき来てもらう、発送するといういずれかの手段をとります。
通常は海洋散骨のプランに、パウダー化の料金も含まれることがほとんどです。
- 日程を決める
散骨をする日取りを決めます。
代行散骨の時は特に日取りは気になりませんが、散骨に参加するプランの場合は天候によって船が欠航してしまうこともありますので、延期の可能性も考えておきましょう。
- 出航~散骨~帰航
当日は船が出航する時間に合わせて集合し、乗船後に散骨ポイントの海域へ向かいます。
散骨ポイントに到着したら遺骨を海へ還します。
粉骨をそのまま海にまくスタイルと、水溶性の紙袋に粉骨を入れて海に還すスタイルがあります。
散骨後に海へ向かって献花・献水・献酒の儀式を行ないます。
儀式の跡に黙祷をささげた後、海域を船が旋回しつつ汽笛を鳴らして帰航となります。
- 散骨の証明をもらう
海洋散骨をお願いした業者さんから、散骨証明書を受け取ります。
業者さんによっては、当日のフォトや映像を収めたディスクなどをいただくこともあったりするようですね。
以上が海洋散骨の一般的な流れでございます。
代行してもらうか、参加するかで流れが少し変わってきますし、屋外での葬送となりますので天候に左右されることもありますから、依頼した業者さんとのやりとりをしっかりしておかないといけませんね。
還りゆく場所がそこにある
海洋散骨についての流れや、メリットデメリットなどを解説してまいりましたがいかがだったでしょうか。
海洋散骨をするという選択は、ほとんどの場合本人の意思によるものです。
本人の希望なしに海洋散骨をしてあげようなんて考えはあまり起こらないですよね。
あなたの希望を家族や知人へ伝えて、同意を得ることで海洋散骨の流れがスタートします。
『自然に還りたい』『子孫に負担をかけたくない』『お墓を受け継ぐ家族がいない』
いろんな事情や希望をクリアして海洋散骨という葬送を実現してください。
海洋散骨は海に囲まれた島国日本の、新たな葬送のスタンダードになるかもしれませんね。
最後までご覧いただきありがとうございました。