カトリックといえばステンドグラスのある教会でミサが行なわれて、神父とシスターたちがキリストを信仰し日々生活している…なんて想像をしますよね。
信者の比率から考えて、日本人がお葬式と聞いてパッと思い浮かべるのは仏教のお葬式だと思います。
では日本のカトリックのお葬式ではどのようなことが執り行なわれているのでしょうか。
この記事ではカトリックのお葬式の流れなどについてさらりと解説してまいりますのでどうぞお付き合いください。
○ カトリックのお葬式に初めて行くので不安だ
カトリックってどんな宗教なのです?
イエスが人間にとっての救世主・キリストであるという信仰からスタートしたキリスト教。
イエスの弟子たちが教団を形成してローマ帝国の国教となり布教を拡大していきましたが、16世紀にキリスト教の内部で宗教革命が起こり、キリスト教の分裂が発生します。
元来のローマカトリック教会に対して反発したものが宗教革命で発足した『新教』プロテスタントです。
カトリックは『新教』に対し『旧教』と呼ばれることになります。
そんなキリスト教の過渡期にカトリック内で設立されたイエズス会のフランシスコ・ザビエルが、日本へキリスト教を伝えました。
伝来当初は布教も進み、仏僧たちとも宗教議論を交わすほどの良い関係でしたが、豊臣秀吉がバテレン追放令を、江戸幕府が禁教令を発令したことにより、キリスト教弾圧という状況に陥ることになります。
明治時代に諸外国からの批判を受けキリスト教禁制を撤廃したのを機に、信仰が暗に認められることになり現在に至ります。
カトリックのお葬式
カトリックの葬儀はキリストの復活による再臨と故人の復活を待ち望むために祈りをささげる事をメインとします。
それとともに、キリストが嘆き悲しむ遺族の力となり、励ましとなるように祈願することと、葬儀の場に集ったキリスト者(キリスト教信者)の信仰をキリストの復活によって新たにさせる意味もあります。
日本のカトリック葬儀においては、日本の習俗に寄せて行く対応がなされており、本来葬儀のミサのみだったところを通夜ミサも行なうようにし、献花のみならず焼香でのお参りも可能にするなど、日本人の考え方にマッチさせた儀式進行を採用するようになっています。
カトリックの葬送儀礼
地域や教会によって多少異なる部分もあるかもしれませんが、カトリックのお葬式の流れは以下のようになります。
カトリックでは通夜を通夜ミサ、葬儀を葬儀ミサと呼びます。
- はじめのことば【はじめの言葉】…司祭よりミサ開始の宣言を行なう
- かんすい・にゅうどう【潅水・入堂】…柩に聖水を振りかけて清めた後、聖歌が歌われる中、柩と遺族が入場する、入場済の時は入堂省略
- まねきのことば【招きの言葉】…葬儀ミサの意味を示し、復活の信仰を新たにして祈ることを勧める
- しゅうかいきがん【集会祈願】…参列者による故人へむけた祈り
- だいいちろうどく【第一朗読】…聖書を朗読する
- とうしょうしへん【答唱詩編】…典礼の聖歌もしくは典礼の詩編を朗唱する
- アレルヤしょう【アレルヤ唱】…『アレルヤ・アレルヤ』で始まる聖書の抜粋をした歌を歌う
- ふくいんろうどく【福音朗読】…聖書の福音書を朗読する
- せっきょう【説教】……司祭より聖書についての説教が行なわれる
- きょうどうきがん【共同祈願】…司祭と遺族(もしくは参列者)が交互に祈りを唱える
- ほうのうのうた【奉納の歌】…パンとぶどう酒を奉げることを勧める歌を歌う
- ほうのうきがん【奉納祈願】…『パンを供える祈り』『ぶどう酒の準備』『カリス(聖杯)を供える祈り』最後の晩餐の準備をする。『献香』捧げものと祭壇へ香を振りかける。『清め』司祭が身と心を清める。『祈りへの招き』捧げものを神が受け入れてくれるように祈りを勧める。一連の流れの後に神に捧げものをして、故人をキリストと共に受け入れてくれるよう祈願する
- かんしゃのさんか【感謝の讃歌】…神の栄光と恵みへの讃歌を歌う
- ほうけんぶん【奉献文】…パンをキリストの体、ぶどう酒をキリストの血として復活を讃え故人を受け入れてくれるように祈る
- まじわりのぎ【交わりの儀】…『主の祈り』キリストの教えを守る誓いに祈りを唱える。『副文』キリストの復活を待ち望む祈り。『教会に平和を願う祈り』『平和のあいさつ』『平和の讃歌』教会と世界に平和を求める祈り。『拝領前の祈り』『拝領前の信仰告白』『司祭の拝領』『信者の拝領』『拝領の歌』『拝領祈願』聖体拝領(パンとぶどう酒をキリストの血肉としていただくこと)をする一連の作法を行なう
- いのりへのまねき【祈りへの招き】…故人との告別に際し祈りを勧める
- けんこう・かんすい【献香・潅水】…司祭が柩に聖水と香を振りかける
- むすびのいのり【結びの祈り】…故人が神の慈しみにより復活できることを待ち望む祈り
- けんか・しょうこう【献花・焼香】…遺族・親族・参列者が順番で献花もしくは焼香をする
- いぞくだいひょうあいさつ【遺族代表挨拶】…遺族を代表して喪主か喪主代理が挨拶をする
通夜ミサでは聖書朗読、説教、焼香献花という流れが一般的です。
献花というスタイル
カトリックの葬儀におけるお参りのスタイルは献花が多いです。
白いカーネーションや菊などをひとり一輪ずつ献花台へ供えて故人のために祈る…。
でもこの献花のお参りは日本だけの習慣なのです。
欧米では墓前に花束を捧げるなどはあるのですが、ひとり一輪の献花なんてしません。
仏式・神式のお葬式に慣れ親しんだ日本人には、焼香や玉串奉奠といったお参りスタイルが定着してしまっていたので、キリスト教は献花でもしようか…なんて考えで生み出された作法なのでしょうね。
他宗教国家の日本らしい発想ですよね。
献花の作法についてはこちらの記事を参考にされてください。
みなさんの中で、葬儀へ会葬に行ったとき焼香をするよう案内されて、作法がわからず困った経験がある人はいますでしょうか?そもそも葬儀に参列したことがないので、困った経験がないという人もいるでしょう。でも、いつ自分が葬儀に関わるこ[…]

安らかな帰天は永遠の命の始まり
キリスト教において死とはひとときの別れであり、キリストの復活とともに永遠の命を得て再開できるのだという考え方をします。
『ご愁傷さまではありません』し『お悔やみ申しあげません』ということです。
なぜなら死をもって神のもとに召されるので、喜ばしいことなのですね。
でも遺族にとっては大切な家族を失って悲しみの中にいるのも事実です。
では何と言葉を掛けたらよいのでしょう…
『安らかな眠りをお祈りいたします』
『○○さまの平安をお祈りいたします』
といったように【祈る】という声かけが良いようです。
ミサの中で神父様も『祈りましょう』とおっしゃっていますので、我々もそれにならいましょう。
この記事ではカトリックのお葬式の流れなどについてさらりと解説してまいりました。
お葬式参列の一助となれば幸いでございます。
最後までご覧いただきありがとうございました。